商工ローンについて

商工ローンとは

消費者金融が個人を対象とする無担保の小口融資であるのに対し、
商工ローン業者は、中小企業を相手に連帯保証人の提供を条件として手形貸付の形で数十万円から1千万円台まで融資し、
銀行や銀行系ノンバンクからの貸付と区別されています。

商工ローンについては、過剰与信(主債務者の破産を予測し、連帯保証人の信用をあてこむ)、
高金利、過酷な取立等の問題があります。商工ローン問題は、手形が振り出されている以上、
不渡りの危険がいつもつきまとい、また、商工ローンが業績を伸ばす背景には銀行の貸し渋りの状況もあって、大きな社会問題になっています。
また、マスコミで過酷な取立が報道されたように,日栄(現ロプロ)や商工ファンド(現SFCG)などが有名です。

商工ローン問題では、借りたものは返すのが原則ではないか、苦しいときには商工ローンに助けてもらったのではないか、
等の債務者側の心情的弱みもあって、行政の対応が遅れたのではないかと思われます。
確かに、法律上、金銭消費貸借契約においては期限に返還すべきこと、遅れたら遅延損害金を支払うことは当然ですが、一方、
法律上、過剰融資が禁止され、制限利息以上の返済額は元本に充当されます。

1 商工ローンの融資手法

  1. 主債務者は小規模な自営業者・商工業者が主となっていて、資金繰りに苦労するレベルの企業が狙われる。
    保証人は必ずつけさせられる。しかも、複数の保証人を要求され「利息は主債務者から、元金は保証人から」回収するというのが商工ローンの特徴である。
  2. 貸付金利は高金利で、本来の利息に加えて保証料や調査料の名目で取られている。
    これらの金利をトータルすると概ね年30~40%にもなる。日栄の場合は100%子会社である日本信用保証(株)という会社に保証させて保証料を取るのが特徴である。
  3. 貸付は手形貸付という形で行われ、主債務者は借入後の不渡り事故の発生に怯えて手形のジャンプをする交換条件として、利息の支払や保証人の追加を事実上強制される。
  4. 保証人は「根保証」という形で極度額(例えば500万円)という保証の枠を設定させられるが、実際にはその説明がきちんとなされないため、保証人は思った以上の金額を保証してしまうのが実情である。例えば300万円の借入のための保証人になってほしいと頼まれて書類に署名押印したが、実際には極度額500万円の根保証契約となっていたということである。
  5. 主債務者が不渡り事故を起こせば主債務者に対する取立はもちろんのこと、保証人に対する過酷な取立が開始される。自宅・職場に電話や訪問して、暴言・威迫を行って短期間で債権を回収しようとする。

2 商工ローン業者に対する対処方法

  1. まず、取引履歴の開示を要求することである。利息の他に、保証料・取立料・調査料などの名目で支払ったものも全て「みなし利息」として利息制限法の制限利率による引き直し計算をする。取引期間が3~4年で元利金は約半分に、5~7年を超えると過払いになっていることが多い。
  2. ただ、利息計算の方法には見解の違いがあり、貸付・返済・貸付(=借換・手形ジャンプ)の繰り返しを形式的に複数の取引と見るか、実質を考えて一連の取引と見るかによって残元利金の額には相当の違いが出てくる。しかし最高裁判例は,実質的に一連の取引と判断したので、これに従って計算することになる(最高裁2004年(平成16年)2月20日判決)。
  3. 保証料についても「みなし利息」と捉えるべきである。日栄の場合、子会社の日本信用保証(株)の名義で保証料を徴求しているが、会社の実態からすると日栄と日本信用保証(株)の実質的一体性があるものと判断されるべきである。上記最高裁判決も同様の解釈を行っている。
  4. 利息計算を行った結果、過払いになっているケースでは商工ローン業者に対して、過払金の返還を求めることになる。実際には商工ローン業者は任意に返還に応じないため、過払金返還訴訟を提起することになる。
  5. 商工ローンの場合、実際には手形書換が錯綜している場合が多く、利息制限法による計算も結構難しい場合がある。また、みなし利息の発見・処理などもあることから、信頼できる弁護士に依頼して処理してもらうことがよい。

【神奈川県が税金の滞納分として、商工ローンの過払い金を差し押さえ
県税の滞納整理のために神奈川県が、滞納者が商工ローンに法定利息を超えて払ったいわゆるグレーゾーン金利分の差し押さえを執行したことが4日、分かった。県税務課によると、金利過払い分を金融業者から返還させ、滞納整理に成功したのは全国で初めてという。
県南県税事務所が今年3月から4月にかけて執行。横浜市内の中古車販売業者が商工ローン4社に、過大に支払った利子約1400万円を差し押さえた。
この業者は商工ローンへの返済のため、県税の自動車税約1000万円の納税が滞っていたほか、家賃や光熱費などの生活費にも困窮していたという。
県は差し押さえで得た1400万円から滞納額を差し引き、残る約400万円を中古車販売業者に返還した。県税務課は「今後も滞納を整理する手法の一つとして活用していく」としている。
グレーゾーン金利は利息制限法の上限(20%)と、出資法の上限金利(29・2%)の中間にあたる金利。最高裁はグレーゾーン金利を無効とする判断を示しているほか、貸金業関連法が改正され撤廃が決まっている。