民事再生とは

民事再生の概要

民事再生法は2000年に施行された比較的新しい法律です。簡単に言えば債務の支払いを一旦停止した上で、一部の債務を免除しつつ長期的に負担を減らした弁済計画を立て、返済するというものです。
適用の範囲も広く、株式会社等の会社組織の債務整理にも個人的な債務整理にも利用が可能な制度です。
自己破産のように債務の一切が免除になるわけではありませんが、それ相応のメリットもあります。詳しくは「自己破産と民事再生の違い」で述べますが、自己破産と違い、住宅や、他の財産など、処分されることはありません。また、借金の理由にも制限が無く、ギャンブルや浪費目的の借金でも適用が可能です。

民事再生でできる種類

民事再生は大きく分けると「会社用」と「個人用」の2つに別れます。更に個人用の中で「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つに別れます。

1)会社版民事再生法
主に中小企業の債務整理・再生に用いられることを想定しています。但し会社規模を問わないため、大企業や上場企業も利用することができます。会社更生法とは違い管財人が入らないため、経営陣の刷新は、法律上必須ではありません。このため、経営者や経営者一族がそのまま運営を引き継ぐことが可能です。

また、和議法にはなかった「担保権の実行制限」が実施されています。このため、再建しようにも工場や商品が差し押さえられてしまってできないなどということは少なくなりました。倒産が確定する前の段階で民事再生手続きを始めることができるため、適切な時期に実施することで再建しようにも手遅れになってしまった、ということも防ぐことができます。

2)小規模個人再生
小規模個人再生を行うための要件は以下の通りです。
  • 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込がある事(アルバイトも可)
  • 再生債権の総額が5,000万円を超えない事
  • 再生計画に対し債権者の過半数の反対が無いこと

小規模個人再生では個人再生委員の制度が設けられています。
ただし、その権限は管財人や保全管理人などの監督委員と比較するとかなり
軽減されています。また、計画弁済総額は以下のようになります。
債務の総額 最低弁済額
100万円未満 債務の全額
100万円以上 500万円未満 100万円
500万円以上 1500万円未満 債務の20%
1500万円以上 3000万円未満 300万円
3000万円以上 5000万円未満 債務の10%

3)給与所得者等再生
給与所得者等再生を行うための要件は以下の通りです。

  • 給与やこれに類する定期的な収入を得る見込みがある人(アルバイトも可)
  • その額の変動の幅が小さいと見込まれる人
  • 再生計画に対し債権者の同意は不要です

計画弁済総額については、小規模個人再生の規定額以上で、かつ、債務者の可処分所得の2年分以上である必要があります。

給与所得者等再生の場合は、可処分所得の2年分以上という基準があるため、年収が多く扶養者が少ない場合は返済総額が多くなります。しかし、債権者の同意が不要であるため、再生計画が否決されることが見込まれる場合には利用のメリットが大きいといえます。

個人再生のメリット

  • 住宅ローン特則を利用すれば、マイホームを手放さなくて済む。
  • 住宅以外の高額財産も手放さなくて済む。
  • 債務総額を圧縮できる。
  • 自己破産と違い免責不許可事由がない。(ギャンブルや浪費でも利用可能)
  • 自己破産と違い職業制限や資格制限がない。
  • 手続が開始されれば債権者は強制執行できなくなる。(取立・督促が止まる)
  • 利息制限法の併用も可能。

個人再生のデメリット

  • 借金の全額を免除に出来ない。
  • 認可までの手続期間が長い。(平均で半年程度)
  • 信用情報機関の事故情報(ブラックリスト)に登録される。(5年間程度、新たな借金は不可)
  • 官報に掲載される。
  • 再生計画案通りの返済ができなくなった場合に、再生計画の取消しの可能性がある。