債務整理の解決事例

ケース1:Aさん(28歳) 小規模個人再生

 

 
負債総額 約500万円
債権者数 7社
毎月の返済 約14万円
同居の家族 無し
月収手取 約24万円
勤続年数 5年
資産 ※1 無し
住宅ローン 無し
住居費(家賃・住宅ローン返済等) 家賃7万円

※1 この場合の資産とは主に、預貯金、積立金、自動車、不動産、退職金(東京地裁の場合、申立て時の推定退職金の1/8を資産とみなします)、保険解約返戻金などです。

Aさんの場合、収入24万円に対して、返済14万円、家賃7万円、さらに食費や水光熱費などを差引くと赤字になってしまいます。この結果、借りては返すの悪循環が発生しています。
Aさんと相談の結果、家計簿を作成し、収入から支出を差引いた場合、毎月5万円が返済可能額となりました。本来であれば、Aさんにとって経済的負担の少ない破産手続に着手する案件でしたが、本人の希望により「どうしても破産だけはしたくない」ということで小規模個人再生の手続を取ることになりました。

◆Aさんが3年間で返済する金額
■Aさんの負債総額500万円×20%=100万円
■100万円÷36回払い=月額約2万8000円

ケース2:Bさん(45歳) 破産または小規模個人再生の選択

 

 
負債総額 約600万円
債権者数 10社
毎月の返済 約18万円
同居の家族 無し
月収手取 約35万円
勤続年数 22年
資産 ※1 180万円
住宅ローン 無し
住居費(家賃・住宅ローン返済等) 家賃9万円

※1 Bさんの資産は保険解約返戻金30万円、財形貯蓄40万円、退職金880万円×1/8=110万円でした。 BさんもAさんと同様に、収入と支出のバランスが崩れています。Bさんと相談の結果、毎月の返済可能額は7万円となりました。手続きの方針は、破産もしくは個人再生を検討しました。

破産を選択した場合
破産を選択した場合には、資産を全て差し出さなければなりません。 Bさんのケースでは、①保険と財形貯蓄を解約し、さらに退職して退職金を破産財団へ提供する。又は②保険解約返戻金(30万円)や財形貯蓄(40万円)、退職金の1/8相当(110万円の資金を用意して破産財団へ提供することになります。さらに破産管財人への費用20万円~(東京地裁の場合)が必要になり、破産申立の際には200万円以上の資金が必要となります。
個人再生(小規模個人再生)を選択した場合
個人再生を選択した場合、返済額の基準は総債務額600万円×20%=120万円と資産180万円を比べて金額の大きいほうが返済基準となります。
◆Bさんが3年間で返済する金額
■Bさんの資産=180万円
■180万円(以上)÷36回払い=約5万0000円
なお、個人再生による3年間の弁済で資産総額よりも多く返済することになるため、保険、財形貯蓄の解約や退職金などを提供する必要はありません。

ケース3:Cさん(40歳) 破産または小規模個人再生の選択(住宅ローンあり)

 

 
負債総額 約500万円
債権者数 8社
毎月の返済 約13万円
同居の家族 妻、子2人
月収手取 約35万円
勤続年数 12年
資産 80万円
住宅ローン 残高2千万円
住居費(家賃・住宅ローン返済等) 毎月のローン返済10万円

Cさんのケースでは、住宅ローンがある場合です。

◆破産を選択した場合
Cさんの資産80万円は破産財団へ提供されることとなり、さらには住宅まで失ってしまいます。
◆個人再生(住宅資金貸付債権に関する特則)を選択した場合
負債総額(500万円)の20%(100万円)と総資産(80万円)を比べた際に、負債総額の20%(100万円)の方が返済基準となります。
◆Cさんが3年間で返済する金額
■Cさんの負債総額500万円×20%=100万円
■100万円÷36回払い=月額約2万8000円
さらに、住宅ローンについては約定のまま返済を続ければ、住宅は手放さなくて済みます。ただし、住宅ローン残高よりも住宅の評価額の方が大きい場合は、差額を資産として評価します。差額が大きければ大きいほど3年間で弁済する金額は増加します。

ケース4:Dさん(50歳) 民事再生による自宅の競売の中止

 

Dさんは住宅ローンを抱えており、相談時には住宅ローンの滞納により自宅の競売が開始されていました。破産手続きを取る選択肢もありましたが、Dさんの強い要望により住宅を手放さない民事再生を選択しました。

住宅ローンの保証会社による代位弁済の日から6ヵ月以内に、民事再生を申立てることにより、競売手続きを中止することが可能であり、住宅を手放さなくてすむ場合があります。

今回のケースでは、早期に民事再生の申告を行い、競売を中止し、無事に再生計画が認可されたため、住宅を守ることができました。

既に競売手続きを開始している方も、条件を満たせば住宅を守ることができるかもしれません。

ケース5:Eさん(35歳) 住宅ローンの条件変更と借入れの減額

 

Eさんは住宅ローンを抱えており、昨今の不景気で賞与がカットされてしまいました。住宅ローンに賞与加算の支払いがあり、返済に困ったEさんは金融機関に条件変更を申込みました。しかし、住宅ローン以外にサラ金や信販会社から500万円の借入れがあったため、条件変更に応じてもらえませんでした。

そこで、民事再生を利用することにより、再生手続きの中で住宅ローンの条件変更ができる場合があります(債権者の同意が必要ですが、協力的です)。今回の場合は、住宅ローンを均等払いに変更し、さらに500万円の借入れが100万円(80%カット)に減額されました。

住宅ローンの条件変更が難航している方は、民事再生を利用する方法もあります。
また、住宅ローン以外に借入れが無い方でも条件変更のために民事再生を利用することも可能です。

ケース6:Gさん(55歳) 給与所得者等再生

 

Gさんは上記ケース3のCさんとほぼ同様のケースですが、500万円の負債のうち、債権額が2分の1を超える債権者(S銀行:300万円の負債)がありました。

小規模個人再生手続きを取った場合、S銀行より再生計画案に異議が出る可能性があり、異議が出てしまえば再生手続きが廃止となってしまいます。

住宅ローンを抱えるGさんはどうしても再生手続きを取りたいため、給与所得者等再生の手続きを行いました。案の定、S銀行からは再生計画案に対する異議が出されましたが、給与所得者等再生の場合は、異議が出た場合でも再生計画案が認可されるため、無事手続きが終了しました。

なお、給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも債権者に対する弁済額が増える場合が多いため、2分の1を超える債権者が存在しない場合は、小規模個人再生を選択することがほとんどです。