そもそも賃貸住宅の更新料とは?
更新料は契約の更新の際に所定の手数料を支払うという物であるが、その相場は首都圏では家賃の1ヵ月分を2年に1回支払うのが一般的でした。しかし、京都など一部地域では1年に1回、2ヵ月分もの家賃を請求するというケースが存在します。しかし、逆に大阪などでは更新料自体が発生しない地域も存在します。実は更新料については、このようにルール自体が明確になっていないため、トラブルの原因になっています。
実際、日本賃貸住宅管理協会(日管協)の三好会長も「更新料はもともと一部地域の特殊な慣習だ。中期的にはすべて家賃に一本化するのが消費者にとっても自然。めやす賃料はそれを睨んだ制度」として、新しい賃料体系などを目指しています。
賃貸市場は大企業から個人まで様々な体系の大家さんから成り立っており、契約書や契約形態も千差万別で業界標準がない状態のため、こういった問題が起こっています。
一部地域にしか存在せず、法律の規定もない更新料のルーツは戦前に遡ります。
当時、人口が増加して住宅不足に陥っている中で、本来ならば家賃を値上げしたいにもかかわらず物価統制令が出たため、家賃の値上げが出来ない状態でした。苦肉の作として、契約を更新する際の居住継続と引き換えにカネを借主に要求するという行為が横行するようになりました。このグレーな権利金が更新料の起源と言われています。
更新料が無効になった場合、戻ってくるの?
更新料を払っている借主も、更新料を頂いている貸主も気になるのは、最高裁判決です。これによって更新料の返還が決まった場合、大家側が過去の更新料を利子を付けて借主に返さなければならなくなるという賃貸住宅版の「過払い訴訟ブーム」にもなりかねないのです。実際、大阪高裁ではすでに支払った更新料をさかのぼって借主に返還を命じる判決が出ています。
しかし、賃貸経営の貸主は前述のように大企業ばかりではありません。サラリーマン大家や市況悪化で賃貸経営に苦慮する個人大家も相当数存在しています。こういった方々は充分な資金が無かったり、時間的な問題があったり等、更新料返還の訴訟が相次げば、資金繰りに窮することも多くなるでしょう。
どうなる?更新料
一連の更新料無効裁判の根底にあるのは「消費者契約法による信義則違反」。つまり「弱い借主を強い貸主が騙したり搾取してはならない」という前提です。しかし、本当に借主は弱者なのでしょうか?もちろん、様々な立場、事例によって差異はありますが、実は現在の借地借家法は借主の権利のみを厚く保護している状態とも言えます。
賃料のことで言えば、古くからの借主で実勢の賃料水準と乖離した安い家賃で入居しているため値上げしたい場合、貸主は契約の更新時に新賃料での契約を結び直す必要があります。
しかし、借主はこの契約更新に応じなくても、今まで通りの家賃を払い続ければ、そこに住み続けることができてしまうのです。これは借主が契約の更新をしない場合、旧契約の内容が続く「期限の定めのない契約」に自動的に移行することになっているからです。
この契約を打ち切って、借主を退去させるには、借主・貸主の両方で、物件を明け渡す正当な理由がある、と裁判所に認められるか、借主に立ち退き料を払わなければならないのです。
このように法的な保護も薄く、市場も冷え込んでおり、更新料返還訴訟のリスクが加わるなど、貸主への圧力はどんどん強まっています。これは長い目で見れば、借主にもマイナスです。当然、貸主が資金繰りに窮することになれば、物件を良質な状態に維持・管理する力が低下し、結果として賃貸住宅の質は下がってしまいます。
借主を優遇し過払い訴訟の続発を招く判決が出され、貸主がさらなる苦境に立たされるのか。借手と貸手のバランスを取り、賃貸市場の安定化が図られるのか。最高裁の判決を待つ他はありません。